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先日45歳の若さで急逝した宮路武さんをはじめ、1980年代は日本のゲーム史において重要な技術の礎を築いた勇者たちがいました。今回は、彼らについて少しご紹介しようと思います。
詳細は続きからどうぞ!

(つづき)


宮路武さん (代表作)シルフィード・グランディア・ガングリフォンなど
駆動クロック4MHzの8bitCPU(Z80、μPD765A)に64KBのメインメモリ(VRAMは48KB)という原始的なコンピュータ「PC-8801」を用い、世界で3番目にポリゴンをゲーム利用した「シルフィード」を開発。また、音声合成など当時最先端の技術など、様々なアルゴリズムをゲームに転用して当時のゲーマーたちを驚愕させました。
音声合成については、16bitのPC-9801を利用して離散フーリエ変換をしていましたが、数秒間解析するのにまる1日かかったそうです。
ハードの分析能力が高いことでも知られています。例えばメガCDでは、リアルタイムポリゴンでゲームレイヤーを描画しつつ、BG書き換え動画で背景にプリレンダリングポリゴンムービーを再生するという、当時では全く考えられないシステムを構築。
また、PlayStation2が発表されたばかりの頃、ソニーからのライブラリが遅れていて多くの技術者がポリゴンを表示するだけで苦労していた時代にGPUの能力を駆使した高度なライブラリを短期間で開発するなど、ライブラリ・システム開発の天才でした。

木屋善夫さん (代表作)ドラゴンスレイヤー・ザナドゥ・ソーサリアンなど
宮路武さんと同様、PC-8801時代からのスーパー技術者。スプライトもBGもない8bit機でカラー高速スクロール(差分書き換え)を実現し、専用ゲーム機以上の品質のゲームを数多くリリースしました。
特筆すべきはソーサリアンのスクリプトドリブンシステムの開発。当時のゲーム開発は各画面をそのままコーディングしておくことが多かったのですが、木屋さんは開発効率や将来性を考えてシステムとシナリオを分離、「システム開発」と「ゲーム開発」の分業化に成功しました。それまではゲーム開発の中心はプログラマーで、ゲーム性はプログラマーの腕にかかっていましたが、これにより、ゲームをデザインする「ゲームデザイナー」が明確に誕生しました。
また、当時はゲームは非常に高価だったのですが、システムディスクを購入すれば、後は割安なアペンドディスクを購入するだけで新しいゲームが出来るということで、ユーザーにとってもメリットがありました。
この考え方は、ハーフライフエンジンから生まれた「カウンターストライク」など、後のMODの礎となりました。

内藤時浩さん (代表作)ハイドライド・ディーヴァ・ルーンワースなど
前述の2人と同様に、貧弱な8bit機であたかもスプライトやBGがあるかのような快適・痛快なキャラクターアクションゲームを実現しました。
驚いたのが、ハイドライドで背景の階層が表現されたことでした。今では当たり前の表現ですが、壁のこちら側を歩くと壁の手前にキャラクターが表示され、壁の向こう側に行くとキャラクターが壁に隠れるようになっていました。
ディーヴァ(DAIVA)では、PC-8801、PC-9801、MSX1/2、X1、FM77AV、ファミコンなどにそれぞれ違うシナリオ、ゲームシステムで展開し、それぞれのパスワードが利用出来るという画期的なシステムを実現しました。
内藤さんは、単なるアクションではなく、きちんとシナリオに基づきエリア拡張されていくという、現代のシナリオ追尾型アクションRPGの礎を築いた人物と言えるでしょう。

彼らのゲームをプレイして、ゲーム業界を志した人も多いのではないでしょうか。私も彼らのゲームを中学・高校時代にプレイして、その素晴らしさに感動してこの業界に飛び込んだ一人です。
この3人は、まさしく「近代ゲーム史を開拓した三大技術者」と言えると思います。

4 thoughts on “日本のゲーム業界の技術面を開拓した勇者たち”
  1. こんにちは、
    懐かしいです。
    当時はインターネットも無いわけで、
    そんな情報集めも大変なときに、どうやってあれだけの物を創り上げたのか不思議です。
    ハッカーとして能力だけでなく、
    ドット絵も、効果音も、世界観も一人で創り上げるわけですからね。

  2. >yukizoさん
    コメントありがとうございます。
    ホント、凄い人達です。
    彼らが築き上げてくれたものがあるからこそ、
    私たちは今ゲームを作れていると思います。

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